東京高等裁判所 平成6年(行コ)218号 判決 1995年12月25日
東京都荒川区西尾久七丁目五〇番一三号一〇八
控訴人
小林孝之
右訴訟代理人弁護士
中本源太郎
青木護
山本裕夫
東京都荒川区西日暮里六丁目七番二号
被控訴人
荒川税務署長 小倉秀夫
右指定代理人
松村玲子
信太勲
青木与志次郎
坂井一雄
日野原浩
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一申立て
一 控訴人
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人が昭和六三年一〇月七日付けでした次の処分を取り消す。
(一) 控訴人の昭和六一年分の所得税に対する更正のうち総所得金額四八六万四九九一円及び納付すべき税額六六万八七〇〇円を超える部分並びに過少申告加算税賦課決定
(二) 控訴人の昭和六二年分の所得税に対する更正のうち総所得金額三七三万七六九〇円及び納付すべき税額四二万九一〇〇円を超える部分並びに過少申告加算税賦課決定
3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
主文第一項同旨
第二事案の概要及び証拠関係
一 本件事案の概要は、原判決事実及び理由中の「第二 事案の概要」記載のとおりであるから、これらをここに引用する。
二 証拠関係は、原審、当審における本件記録中の書証目録、証人等目録記載のとおりであるから、これをここに引用する。
第三当裁判所の判断
一 当裁判所も控訴人の本訴請求はすべて理由がないものと判断する。その理由は、次のとおり付加訂正するほか、原判決事実及び理由中の「第三 争点に対する判断」記載のとおりであるから、これをここに引用する。
1 原判決一二枚目裏一〇行目の「原告に対し、」の次に「税理士の立会いは法律で認められているが、控訴人及びその取引先に対する」を加え、同一四枚目裏二行目末尾の次に行を改めて次のとおり加える。
「 もっとも前記認定のとおり、被控訴人所部職員が反面調査に着手したのは、控訴人方へ二回目の臨場、調査をした後まもなくであることが認められるが、前記のようなその後の臨場を含む合計三回の臨場における控訴人の態度は、これを一体として観察して、本件における推計の必要性を認める資料となり得るものである。
また本件にあって控訴人は第三者の立会いに固執し、右立会いなき限り調査に応じないとの態度を示していたものである。ところで後記のとおり税務調査において質問検査の実施の細目は税務職員の合理的裁量にゆだねられているところ、本件にあっては、前記認定のとおり担当職員は控訴人及びその取引先に対する守秘義務の関係から第三者と認められる民主商工会の事務局員の立会いは不適当であると判断し、従前の経緯も考慮して同日の調査を中止し、反面調査を実施することとなったというものであり、右職員の判断が裁量権の濫用等に当たると判断することはできず、また右事情も推計の必要性を裏付ける一事由となると解するのが相当である。」
2 同一八枚目表五行目の「主張するが、」の次に「税務職員の守秘義務も考慮すると」を加え、同裏一〇行目の「比準同業者の売上金額を原告の売上金額の」を「比準同業者の総収入金額(売上金額)を控訴人の総収入金額(売上金額)の」に、同一九枚目表六行目冒頭から八行目末尾までを、
「 さらに控訴人は、控訴人の事業では外注費の占める割合が高い旨を主張する。一般に被控訴人が同業者比率を平均値により推計した事案にあっても、控訴人においては右平均値に吸収され得ないような、他の同業者の平均より格段に営業状態が悪くなるはずであるという営業条件の劣悪性を積極的、具体的に主張立証することにより、右合理性を覆すことができるものと解される。しかしながら本件にあっては控訴人は、前記外注費が多い旨一般的に主張し、概括的にこれに沿う供述等をするのみであり、他の同業者との、その占める割合、売上と経費との対応関係等についての具体的比較など、本件推計自体を不合理ならしめるような特殊事情については、具体的な主張、立証が足りないものといわねばならない。」
にそれぞれ改め、同二〇枚目表一行目の「収入金額」の次に「中、本件の対象となっている昭和六一年分、昭和六二年分」を同枚目表五行目の「一四」の次に「(原審被控訴人平成五年一〇月一日付け証拠説明書参照)」を、同二二枚目裏一〇行目末尾の次に行を改めて、
「25,268,930-(338,600-184,280)-(27,800-12,500)=25,099,850」
をそれぞれ加える。
3 同二四枚目裏五行目末尾の次に行を改めて、
「 控訴人はいわゆる実額反証をするにつき、控訴人の収入、経費、それらの対応関係についての主張立証は被控訴人が負担すべきである旨主張する。しかしながら、被控訴人において推計の必要性、合理性等について立証した後に控訴人のなす実額反証に係る事実については、推計課税の趣旨からして、これをいわゆる間接反証とするか再抗弁とするかはともかく、控訴人において主張立証の負担を負うものと解するのが相当である。」
を加える。
4 同三〇枚目表四行目の「被告が」から同六行目末尾までを次のとおり改める。
「 被控訴人が推計により算出した控訴人の売上原価等の金額の中には、既に機械に係る減価償却費が含まれているというべきであるから、控訴人がその税務申告等に際し右を独立の経費とする会計処理基準を採っているか否かはともかく、本件にあってこれを別個の経費として計上することは、右償却費を二重に評価することとなり、適当ではないというべきである。また控訴人において、右減価償却費が他の同業者より特に多い旨を主張するのであるならば、その旨の具体的立証が必要であると解されるところ、前記外注費同様、具体的立証に欠けるものといわねばならない。」
二 以上によれば、原判決は正当であり、本件控訴は理由がないのでこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 丹宗朝子 裁判官 北澤章功 裁判官新村正人は転補につき署名捺印することができない。裁判長裁判官 丹宗朝子)